歌舞伎役者の中にも、昨今ではテレビドラマや映画など、他のジャンルで活躍する若手が多く見られます。以前から、中村勘三郎さんや、松本白鷗さんなどはNHK大河ドラマでも活躍されており、現在では中村勘三郎さんの長男・中村勘九郎さんが、大河ドラマに出演して演技の幅を広げています。
その他にも、実はまだあまり知られていない若手の歌舞伎役者が、歌舞伎界にはたくさんいるのです。
ここでは、これから活躍が期待される、若手の歌舞伎役者を紹介してみたいと思います。
若手のホープは、ほとんどが御曹司
「梨園」と呼ばれる歌舞伎の家に生まれた子どもは、幼い頃から子役として歌舞伎の舞台に立つことがほとんどです。
現在でいえば、十一代目市川海老蔵さんの長男・堀越勸玄くんや、五代目尾上菊之助さんの長男・寺嶋和史くん、中村勘九郎さんのところの御兄弟のように、2~3歳で「初お目見得」として、お客様に紹介されます。
また、父親だけでなく、母親も同じ梨園の家系出身であったり、芸能界で活躍された方であったりする場合が多いので、子どもでも幼い頃から行儀など厳しく躾けられているようです。
そうして物心つく前から歌舞伎に慣れ親しみ、父親の背中を追って歌舞伎役者を志すというのは、自然の流れでもあり、歴史や運命的なものを感じざるを得ません。
歌舞伎役者はやはりイケメンが多い?!
最近では、若手の歌舞伎役者にスポットをあてたCMも作られたりしています。積極的にドラマやバラエティに出演したり、昔よりも露出はかなり多くなっているように感じます。
しかし、本業は歌舞伎です。毎年、お正月に浅草公会堂で上演される「新春浅草歌舞伎」は、若手歌舞伎役者の登竜門と言われています。プログラム仕様も華やかで、ポスターなども若手らしくお洒落に作ってあります。
それでは、どんな若手の歌舞伎役者がいるのか、「新春浅草歌舞伎」にも出演している役者さんや、将来が楽しみな若手を少しご紹介します。
二代目尾上松也(おのえ まつや)
生年月日:1985年1月30日
六代目尾上松助さんの長男で、5歳で初舞台を踏んでいます。テレビの露出も多く、最近ではミュージカルにも出演するなど、その才能をさまざまなジャンルで発揮しています。最近では、城田優さん、山崎育三郎さんと一緒に「IMY」というユニットを組んで、新しい活動にも挑戦しています。
二代目坂東巳之助(ばんどう みのすけ)
生年月日:1989年9月16日
十代目坂東三津五郎さんの長男で、2歳で初お目見得、6歳で初舞台を踏んでいます。『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』のボン・クレー役では、周囲から高い評価を得ました。新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』では主演を勤め、映画「東京喰種-トーキョーグール-」のウタ役でもその存在感を示しています。
四代目中村歌昇(なかむら かしょう)
初代中村種之助(なかむら たねのすけ)
生年月日:1989年5月6日(歌昇)、1993年2月22日(種之助)
三代目中村又五郎さんのご子息です。歌昇さんは、2015年のドラマ「下町ロケット」で研修医役を演じて、イケメン俳優と話題になりました。ファンの間では、二人の名前の頭を取って「うたたね兄弟」という愛称で親しまれています。
四代目中村梅枝(なかむら ばいし)/初代中村萬太郎(なかむら まんたろう)
生年月日:1987年11月22日(梅枝)、1989年5月12日(萬太郎)
おふたりは五代目中村時蔵さんのご子息です。若手女形として活躍しており、2018年には、それまで坂東玉三郎さんだけが演じていた、女形の大役である『阿古屋』を継承されました。
初代坂東新悟(ばんどう しんご)
生年月日:1990年12月5日
初代坂東彌十郎さんの長男です。父親の彌十郎さんも大変ユーモアのある方で知られていますが、息子さんの新悟さんもかなり個性的なキャラクターなようです。ブログで展開されている内容が、歌舞伎役者らしからぬ面白さと話題になっています。
初代中村壱太郎(なかむら かずたろう)
生年月日:1990年8月3日
四代目中村鴈治郎さんの長男です。祖父は人間国宝の四代目坂田藤十郎さん、祖母は国会議員も勤められた扇千景さんです。公式HPにアップされている、趣味の料理の腕前にも注目です。
二代目尾上右近(おのえ うこん)
生年月日:1992年5月28日
清元宗家七代目 清元延寿太夫の次男で、清元節宗家の出身です。七代目尾上菊五郎さんのもとで、歌舞伎役者としての修業を積んできました。2018年には、浄瑠璃方の名跡である七代目清元栄寿太夫を襲名し、清元としても活躍しています。
五代目中村米吉(なかむら よねきち)
生年月日:1993年3月8日
五代目中村歌六さんの長男です。若いながらも、すでに女形の大役に抜擢されるほどの期待の星です。キュートなお姫様もクールなお姐さんの役も美しくこなし、見応えのある演技が評価されています。
初代中村隼人(なかむら はやと)
生年月日:1993年11月30日
二代目中村錦之助の長男で、8歳で初舞台を踏んでいます。大河ドラマ「龍馬伝」や「八重の桜」にも出演経験のあるイケメンで、素顔の写真集も出版されています。最近では、新作歌舞伎『NARUTO-ナルト-』のうちはサスケ役で活躍しています。
六代目中村児太郎(なかむら こたろう)
生年月日:1993年12月23日
九代目中村福助さんの長男です。スラリとした長身のイケメンですが、父親の中村福助さんの跡継ぎとして、若手女形の中でも将来を嘱望されるひとりと言われています。
四代目中村橋之助(なかむら はしのすけ)/三代目中村福之助(なかむら ふくのすけ)/四代目中村歌之助(なかむら うたのすけ)
生年月日:1995年12月26日(橋之助)、1997年11月13日(福之助)2001年9月10日(歌之助)
3人とも八代目中村芝翫さんのご子息で、2016年に同時襲名しました。父親の芝翫さんと合わせての4人同時襲名ということで、当時話題になりました。母親は女優の三田寛子さんです。
二代目中村鶴松(なかむら つるまつ)
生年月日:1995年3月15日
十八代目中村勘三郎さんが「3人目のせがれ」と呼んで可愛がったのが、中村鶴松さんです。子役時代に一般の家庭から中村屋の部屋子になり、修行を積みました。現在は六代目中村勘九郎さんや二代目中村七之助さんとともに、中村屋を盛り立てる存在となっています。
五代目市川團子(いちかわ だんこ)
生年月日:2004年1月16日
九代目市川中車(香川照之)さんの長男で、家庭の事情から、歌舞伎を始めたのは8歳くらいからと言われています。現在ではすでにさまざまな演目に出演しており、その整った顔立ちからも、今後の活躍が期待されます。
八代目市川染五郎(いちかわ そめごろう)
生年月日:2005年3月27日
十代目松本幸四郎さんの長男で、2018年に親・子・孫の三代同時襲名を行いました。その顔立ちは驚くほど華のある美形で、襲名以来、数々の雑誌にも取り上げられています。
若手の歌舞伎役者は、素の自分もアピール!
一昔前のように狭い情報だけでなく、昨今ではブログやSNSの利用により、役者個人からの発信が宣伝効果に繋がっていると言えます。テレビや映画などの露出がなくても顔を覚えてもらえる、SNSは若手の歌舞伎役者にとって最良のツールとも言えそうです。
歌舞伎の舞台上では、隈取りや化粧により役者の素顔を見ることはあまりありませんが、ブログやインスタグラムでは素顔を見ることができます。
実際に、一般の10代20代の青少年と変わらず、趣味やお洒落を楽しんでいる姿を見ると、親近感が沸いて「ファンになった」という声もあるようです。ファンにも10代20代が増えるのは、歌舞伎界の将来にとっても嬉しいことだと思います。
さらに世襲の御曹司だけでなく、より多くの若手歌舞伎役者が育っていくのも見てみたいですね。