歌舞伎は、江戸幕府の厳命により、現在に至るまで、男性のみで上演される舞台となっています。女性の役も男性が扮して演じており、これを女形(女方)と呼ぶようになりました。次第に、女形をメインに演じる役者にも注目が集まり、これまでにも様々なスターが誕生してきました。
現在の歌舞伎役者の中にも、重要な女形として活躍する人が多く存在しています。ここでは、現在活躍している歌舞伎の女形について、ランキング順に迫ってみたいと思います。巷のさまざまなランキングを考慮し作成しておりますので、科学的根拠はございません。お楽しみ程度でご覧くださいませ。
現在の”女形“の最高位は誰?
現在の女形といえば、最高位は、五代目坂東玉三郎さんだと多くの人が口を揃えるでしょう。歌舞伎ファンならずとも、その名前は聞いたことがあると思います。現在の歌舞伎界を背負って立つ、“立女形”と言われています。
ご自身は梨園出身ではありませんが、十四代目守田勘弥の養子となり、歌舞伎界に入りました。名優と謳われた大役者・六代目中村歌右衛門亡き後、『壇浦兜軍記』の阿古屋などの大役を継承したのが、坂東玉三郎さんです。さまざまな逆境を乗り越えて、努力を重ね、現在の地位を築かれました。
その活躍は、いまや歌舞伎の枠を超えて、国際的な活躍を見せています。世界的にも超一流の芸術家たちとコラボレーションした舞台は、各方面に大きな影響を与え、賞賛されました。
現在は、そうした活躍をされつつ、後継者の育成にも力を注がれています。誰もが認める現在女形の最高位は、五代目坂東玉三郎さんと言えるでしょう。
NO.2 華があり、抜群の存在感を放つ女形
坂東玉三郎さんが期待をかける若手のひとりが、二代目中村七之助さんです。2012年に惜しまれつつこの世を去った、十八代目中村勘三郎さんの次男で、2019年の大河ドラマで主演を勤める、六代目中村勘九郎さんの弟にあたります。
鼻が高く、細面にスッキリとした切れ長の眼が印象的な顔立ちで、若衆や男伊達も演じられる幅の広い役者として、女性にも大変人気があります。
中村七之助さんは、2014年3月の歌舞伎座の公演で、坂東玉三郎さんと共に『二人藤娘』を舞われて、話題になりました。2019年1月の歌舞伎座では、昼の部の『廓文章』という演目で、“扇谷 夕霧”という大役に抜擢されています。この時も、坂東玉三郎さんが、直々にお稽古をつけたと言われています。
さらに、父・十八代目中村勘三郎さんの意志も受け継ぎ、「平成中村座」の上演や、新作歌舞伎の出演にも力を注いでいます。2015年に、新橋演舞場で上演された「歌舞伎NEXT『阿弖流為』」では、妖艶な「立烏帽子」役で、圧巻の立ち回りを演じました。
今後は、2019年8月の歌舞伎座公演の第一部(三部制の内)で、『伽羅先代萩』の“乳母 政岡”を演じることになっています。この役は、かつての六代目中村歌右衛門から、五代目坂東玉三郎さんへ継承された役で、女主人公の大役でもあります。
中村七之助さんが、今後の歌舞伎界の「女形」にとって大きな存在となるのは、間違いないと言えそうです。
NO.3 思わず「女の子?!」と見間違える所作に、男性ファンも急増?
3位は、五代目中村歌六さんの長男・五代目中村米吉さんです。お姫様から粋な姐御役まで、あらゆる“女性の役”を演じる女形の中でも、一番「女性に見える」、むしろ「女性にしか見えない」と思わせる役者さんです。
目じりの下がった優しい顔立ちは、化粧をすると表情がなんとも可愛らしくなります。声の使い分けや所作にも、女性らしいたおやかさが醸し出され、男性のファンも多くいるようです。
平成5年生まれの若手ながら大役の経験もあり、女形として、その可能性に期待が集まっています。
NO.4 『阿古屋』を継承!中村梅枝と中村児太郎
2018年12月の歌舞伎座公演では、坂東玉三郎さん、中村梅枝さん、中村児太郎さんが、『阿古屋』を日替わりで演じたことが話題となりました。
『阿古屋』は、六代目中村歌右衛門が2001年に亡くなられた後は、坂東玉三郎さんだけが演じてきた大役です。有名な女形の、中村福助さんを父に持つ中村児太郎さんと、中村時蔵さんの息子・中村梅枝さん、ともに、これからの成長が楽しみな花形役者と言われています。
実はたくさん存在する、上位に入れたい女形
他にも魅力的なオーラを放つ、素敵な女形を演じる役者さんが多くいらっしゃいます。たとえば、尾上菊之助さん演じる『弁天娘女男白浪』の艶やかな弁天小僧は、女性が見ても憧れるような、爽やかな色気を放っています。
また、スーパー歌舞伎ではヒロインを演じ、透明感のある芸風で人気の、二代目市川笑也さんも、流麗な美人で人気です。おすすめとしては、まさに存在そのものが深窓の姫君のような、五代目中村雀右衛門さんも見応えがあります。
女形は、座頭も張れる
ちなみに、一般的には“女形”が多く使われますが、芸能の世界では「方」を役籍として広く表現します。正式には“女方”ですが、ここでは流通している“女形”と表現しています。“立女形”は、歌舞伎では少ない、女主人公の役を勤めることができる、超一流の女形を指します。
先に挙げた『伽羅先代萩』の“乳母 政岡”や、『仮名手本忠臣蔵』の“戸無瀬”、『助六』の“揚巻”などは、立女形が勤める役と言われています。
若さが売りではこなせない役どころが、見応えのある作品を作っているとも言えそうです。若手から重鎮まで、女形に年齢は関係ないと証明しているようでもありますね。
歴史上の著名な女形につきましてはこちらの記事をご参照ください。
歌舞伎役者の女形で有名な人といえば?知っておきたい人は誰?
歌舞伎は江戸時代初期、風紀の乱れを理由に、幕府から全ての役を男性だけで演じるように義務付けられました。「野郎歌舞伎」と呼ばれています。そのため、女性役をメインに演じる歌舞伎役者「女形(女方)」が活躍し ...